【05-2】モワサックのサン・ピエール修道院(2)夢の回廊

モワサックのサン・ピエール修道院(2) - 夢の回廊 -

モワサックのサン・ピエール修道院(1) - 予感 - からの続き)


サン・ピエール修道院付属の教会に着いたはいいものの、
お目当ての回廊へゆく扉が見つからない。
誰に聞いても、「知らない」と冷たくあしらわれ、
まるで、すべての扉が閉じられたかような絶望に伏せるその時、
天使のような美青年が現れました。

「回廊までご案内しますよ」

救われた思いで、天使青年についていきました。
しかし、どんどん教会とは離れてゆき、本当にこっちでいいの?と、
一抹の不安も。

金髪が陽に輝き、透けるような白い肌を持つ青年の声はきわめて美しく、
話し方に気品が感じられました。

うん。大丈夫。
だってこのヒト、こんなに目が優しいもの。
私たちは天使青年を信頼しました。

「ここですよ」

回廊への入館窓口に無事到着しました。
入場料が必要だったので、発券窓口へ行くと、
つい先程「知らない」といって門前払いしたお姉さんがいました。
信じられません・・。

天使青年は、発券係のお姉さんに、何やら耳打ち。
するとどうでしょう?
「quinze minute キャンズ ミニュッツしかないけど、どうぞ」といって、にっこり。
回廊への扉が開かれたのです。(実際には小さく細い入口)

どうなってるの?

しかもこの場所は、さっきまで私たちがいた場所です。
どうしてあんなに遠回りを?

どういうこと?
あなた何者?

天使青年に話しかけようと振り向くと、もう姿はありませんでした。

夢?

でも夢なら覚めないで!
閉館まで、あとquinze minute キャンズ ミニュッツ15分!

私たちは夢に突入していきました。



回廊1
Le 10 Juillet 2010*Moissac* Photos by RESONANCE



ああ、なんて美しいのでしょう!
夢の回廊!

世界で最も美しいと言われている回廊は、
東西南北約40メートル四方の空間に、列柱が整然と並んでいました。

よくみると一本と二本の華奢な円柱が交互にならび、
一辺の回廊の中央には太い角柱が配されて、リズムと安定感をもたらしていました。



回廊2



11世紀のものとされる88本の柱頭は、植物や花々が彫られ、
旧約と新約の聖書が題材になっています。

アダムとイブ、カインとアベル、ダニエルと獅子たち、カナの結婚など、
数々の彫刻が、壮大な絵巻物を織成していました。

この美しさはみごととしか言えません。
わたしを惹きつけてやまないロマネスクの柱頭彫刻については、
このブログのカテゴリー ”色と光のアート参拝” で、改めて書こうと思います。

それにしても おかしい・・・。

回廊には私たちたった二人だけ。
真夏のバカンスの、こんな有名な観光地に誰もいないのです。

中庭には象徴的な大きな杉の木がありました。
杉の木が一番よく見えるベンチに座り、ひと口お水を飲み、
贅沢な静寂の中に浸りました。



杉



するとその時、

    「よく来たのう~」 

と、杉からおじいちゃん風の声が聞こえました。
えっ?空耳?
それは私にではなく、夫に話しかけたような気がしました。
何やら不思議の世界にいるような。

時計を見ると、いけない!閉館時間です!
静寂は破れ、現実に引き戻されて出口を探して走りました。

12時までのシンデレラ。
魔法が、夢が、終わってしまう。

出口と間違えて、らせん階段に出てしまいました。
円形の形の塔のようでした。
ここじゃないよね?
この塔に登ってしまったら、もう帰れない。

早く出ないと閉じ込められてしまう。
回廊で野宿はご免です。

いま来た入り口(出口?)へと、急いで戻りました。



回廊と人



これはまた、どうしたことでしょう?

回廊に戻ると、人でごった返していました。
よく見るとエレガントな洋服に身を包んだ人々。
いつの間に?
ものの30秒くらいの間に、こんなに人が一斉に入館するでしょうか?
しかも、もう閉館のはず。

タイムスリップしたような夢の回廊から、
どのように外に出たのかは覚えていません。

気が付いたら、最初に着いたサンピエール修道院付属教会の入口にいました。
着いた時にはなかった薔薇の花びらが、地面にたくさん撒かれていました。

とっても短い間に結婚式があったようです。
あの回廊にいた人々も、参列者だったのでしょう。

quinze minute キャンズ ミニュッツ。
たった15分とは思えない。
2,3時間過ごしたような、いえ、
時が止まったかのような、異空間に迷い込んだようでした。



hotel.jpg



モワサックは、Tarn タルヌ川と Garonne ガロンヌ川が交わる高台にある街。
中心街から離れた川沿いのホテルに戻り、今日一日を振り返りました。

ロカマドールからハプニング続きの移動、
意地悪な人々と天使青年の導き、
おじいちゃん杉の労いの声、15分だけの夢の回廊。
なんだか不思議な一日でした。



kawa.jpg



部屋の窓を開けると、真下に川が流れていました。
大きな川の水の流れはなく、まるで夜空を映す鏡のようでした。

すぐ近く、タルヌ川に架かる眼鏡橋も水面に鏡像を作り出していました。
眺めていると、また異空間に入っていくような。

モワサックの一日は、どこまでも夢とうつつの狭間にいるようでした。




* ~ * Fin ~* Chaptre: 5 * ~*





カタログ

本
*旅の思い出*サン・ピエール修道院のカタログとサンチャゴ巡礼路の美しい写真集








テーマ:旅行記 - ジャンル:旅行

2015.08.16 | マリア巡礼

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Author:mariaikuko
青山マリアいく子の
「祈りとアートの巡礼記」にご訪問下さりありがとうございます。
導かれるような旅の不思議について書きたいと思いました。
旅で出会った出来事、美しいもの、心の目が見たものを綴っています。
皆さまの旅も、実り豊かなもので
ありますように。

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